訪れたい沿線をつくるために 北海道北斗市
北海道新幹線開通に伴い、江差線が第三セクターとなった道南いさりび鉄道。通称いさ鉄。
函館から木古内まで走っている(五稜郭~函館はJRに乗り入れている)。
いさ鉄・小上社長と出会ったのが、ちょうど一年前。元々、函館市役所にいた小上社長。
誤解を恐れずに言えば、普通は腰を掛けていれば済むようなところ、バイタリティ溢れ、あらゆる人と会い、あるゆる可能性を探り、台湾鉄道との連携や、車内の明かりを消す夜景列車、函館港に寄港するクルーズ船客の取り込みなど、数々の取組を実現しています。
そんな小上社長だからこそ、地方鉄道の新たな可能性・事業を考えてみるという、いわば、仕事を増やすような私の提案に賛同してくれました。ただ、第三セクターという税金を投入している企業という性質上、なかなか予算的には難しく、「北斗市役所とともに、地域を盛り上げる事業を考える、その中で、もしいさりび鉄道が受けられることがあれば、受けていただく」ということで、私が登録されている総務省地域力創造アドバイザー制度を使い、北斗市に魅力ある事業をつくるというプロジェクトが始まったわけです。
隔月で北斗市を来訪し、あらゆる事業の提案、それに対する意見交換、地元事情の把握、そしてブラッシュを続けてきました。会議では、北斗市のあらゆる部長・課長に集まってもらっているのですが、嬉しかったのが、幹部の方に、みんなの目の色が変わったと言われたこと。事業が実行され、それがもし評価されるとしても、それはかなり時間を要するものだと思います。アニメの聖地巡りや、海外有名アーティストがインスタに投稿した、というような奇跡のホームランを目指すのではなく、コンスタントに打率3割を打てる事業をつくる気持ちで取り組んでいます。
この写真は北斗市のウリであるトラピスト修道院。
トラピスト修道院に続く一本道のポプラ並木、そしてその先には海が広がっています。
死ぬまでに見ておきたい絶景でしょう。
ただ、修道院は修道院であって、その性質を理解しなくてはいけない。わんさか観光客を呼べばいいっていうものではない。
修道院そのものというよりは、修道院のある空気感漂うこのエリアに、無理のない受け皿を用意して、理解ある人にきてもらう。
この風景とともに流れる時間をしっかり楽しんでもらい、近くのワイン農園でとれたワインや、近くの牧場で獲れた牛乳のカフェオレを出す、こじんまりとした海岸沿いにある店がにぎわっている。
そういったものを積み重ねていって、成熟した国のとある海沿いの観光地などになってもらいたいと思っています。
大山詠司