【連載】そのまちの見方vol.1 静岡県熱海市
訪れたい場所代表取締役の大山です。
地域活性、地方創生という言葉が多く使われるようになった昨今、復活した観光地、奇跡のまちづくりと言われるの事例が、メディアで多く登場します。日本中の地域が抱えている問題は、人口減少、若者流出、高齢化等々、共通的です。一方で、地域を活性する方法は多様です。
その方法、人が訪れたいと思うような場所になっている理由を、どのように探したらいいのか。まちづくりに関わっている仕事の方々に、少しでも視座となればと考え、まちの見方をご紹介していきたいと思います。
熱海が最近元気という記事をみかけるようになって久しい。前回、私が熱海に来たのは15年ほど前で、前職時代に新型特急開発のための視察で、伊豆急行に訪れた時以来。今の商業駅ビルは無かったものの、駅前の商店街は当時も賑やかだったことを記憶している。
今回、熱海を訪問して、熱海の空き物件を商店やゲストハウスにリノベーションすることで活性に寄与している株式会社machimoriの戸井田さんにお会いした。
「熱海が元気になった理由については、色んな人が色んな事を言っている。」という。
確かに。熱海は元気になった理由は、1)これまでは梅だけであった花の名物をジャカランダ・ローズ・もみじと多様にしてイベントを打ったこと、2)熱海市役所のロケ受け入れによる露出の増加、3)株式会社machimoriによる空き物件の商店化(熱海プリンなど)、4)来宮神社のリニューアル(物販、飲食スペースや楠の木のライトアップなど)、5)反社会的勢力の撤退・・・などなど。色んな人が色んな事を言っているということは、多分元気だ。その町を誇りにし、私が携わったことをしっかりと伝えたいのだから。ただ、戸井田さんは、自分たちの取組みを謙虚に話す姿勢が印象的だった。
宿泊数は約300万人に回復・不良債務残高の減少といった成功面、一方で、住民・保養所数の減少や中心市街地の建物老朽化、といった課題もある。また、外国人旅行者割合は箱根が10%強に対して熱海は1%である(戦略的な意図もあるので一概に課題とは言えない)。トータルでみたら、優秀な観光地だ。ただ、どうも、宿泊数がV字回復してよかったね、アタミ!、という気分にまちを歩いていて思えなかったのは、なぜなのだろう。
ここからは、私が勝手に感じた空気感からの仮説の話。
色んな人が色んな事を言っているように、確かに熱海は成功している。でも、このイベントで成功した、この人のおかげで成功したと言われることに、地元の様々な事業者が快く思っていないのではないだろうか。多かれ少なかれ、それぞれの事業者の努力があるからで、特に歴史的な温泉地・熱海の事業者には、それぞれにプライドがあるだろう。
温泉地は特に業者が繋がりあっている。不況のときも助け合った同士だ。ホテル、卸業者、小売店、交通事業者、土産屋、土産物メーカー、などなどが運命共同体として繋がっている。その中の一つの団体が成功要因と言うことに、違和感を感じるのではないだろうか。それは、成功要因を決め付けようとしてしまうヨソモノのせいかもしれない。
幼稚な表現だが、みんなで頑張ったのが熱海なのではないだろうか。チームプレイで勝ったはずの熱海が、個人表彰をされている感じがしていた。しかし、みんなで考え、みんなで活性した熱海と捉えてみると、素晴らしい訪れたい場所に思える。
大山詠司