【連載】そのまちの見方vol.2 栃木県宇都宮市
訪れたい場所代表取締役の大山です。
地域活性、地方創生という言葉が多く使われるようになった昨今、復活した観光地、奇跡のまちづくりと言われるの事例が、メディアで多く登場します。日本中の地域が抱えている問題は、人口減少、若者流出、高齢化等々、共通的です。一方で、地域を活性する方法は多様です。
その方法、人が訪れたいと思うような場所になっている理由を、どのように探したらいいのか。まちづくりに関わっている仕事の方々に、少しでも視座となればと考え、まちの見方をご紹介していきたいと思います。
まちづくりの仕事の関係で、宇都宮の不動産関係者の元を訪れた。ずいぶん昔から、LRTを走らせる計画があり、政治的に紆余曲折があって、まずは、2022年に宇都宮駅の東側にLRTが開通する。これを契機にシームレスな交通体系づくりなど、大きな契機となろうとしている。関係者の話によると、中心地であるオリオン通りは一時期よりは盛り返しているらしい。空き店舗は少なくなり、にぎわう居酒屋も点在する。アニメイトが入る商業ビルは、宇都宮のオタクの聖地の香りもする。餃子に限らず、カクテル、紅茶など多様な盛り上げ方も、地元の努力によるものだ。
そんな中で、宇都宮パルコの撤退検討の報道があった。地方百貨店の撤退というのは、今に始まったことではないが、行政が補助をだしたり、行政サービスを入れるなどして、取り急ぎ「凌ぐ」店舗が見受けられる。宇都宮パルコを訪れると、実際に空き区画も多く、店内で配布されている、渋谷パルコリニューアルの広告がむなしかった。
「撤退」という言葉は寂しく、人口減少や中心市街地衰退はどこでも起きているが、そこに究極的な不幸があるわけではない。過度に税金を投入して、コンサルを入れて施策を打つというのは周囲のエゴで、言わば、薬を飲ませて管だらけにするような延命措置はやめたほうがいいのではないかと思う。一度死んだとしても、新しい命は違う形で生まれる。川崎駅前にあった老舗百貨店・さいか屋は、その跡地に低層建物としたパルコがオープンするという。無くなっても、必要であれば何かが生まれる、と考えるのは無責任に見えるが合理的なのかもしれない。
現在の宇都宮パルコ全区画に、中価格帯以上のスタイリッシュなテナントを入れるというのは厳しくとも、大通りの人の目に触れる1階区画は、利用価値が高い。隣に建つドン・キホーテは、1Fに食品フロアがあり、日常使いがされて賑わっている。周囲には、北関東の拠点として、あらゆる業種の支社・営業所機能があり、従事者も数多くいる。道路向かいには、大きな鳥居の二荒山神社があり、恐らくパルコに大きな窓が多く設置されていれば、その荘厳な雰囲気がとっかりと見えるはずだっただろう。足もとを意識すると、その需要やサイズ感が見えてくる。
百貨店撤退に焦って、色んな人が色んなことを言い出す。がん宣告をされて、焦るのは本人よりも周りだったりして、色々な延命措置の選択肢の情報が入る。延命措置的な対策はやめて、新しい命が生み出される環境づくりをすることを現実的に進めたい。
大山詠司