訪れたい場所には訪れたい人がいる 三重県菰野町
先週末、三重県の菰野町にお邪魔してきました。
訪れたい場所がここにはたくさんあります。
かもしか道具店というブランドを立ち上げている山口陶器の山口社長の講演会へ。そして、ここに根付く萬古焼生誕300年の様子を覗きに。
萬古焼は焼き物の中でも、立ち位置がすこし面白いのです。
陶磁器・焼き物の一つで、葉長石(ペタライト)を使用して耐熱性に優れた陶器と磁器の間の性質を持つ半磁器(炻器)に分類されます。みなさんのご実家やおばぁちゃんの家でよく見る土鍋、だいたい萬古焼です。道具のための陶器たちなのです。
工芸の中でも私は焼き物が一番好きで、理由は現代の生活に一番しっくり馴染む存在だから。
日本中の工芸産地をあれこれ見て回りたい。けれど、数多くの焼き物産地に定期的に行くことは難しい。それでもなんとかスケジュールに都合をつけて菰野町に訪れたい理由は「訪れたい人がいる」からです。訪れたい場所には、訪れたい人がいる。
産地に観光として人が訪れるにはこの5つが大切です。
「美味しいご飯と素敵な空間」
「とっておきのお土産」
「美しい景色と産業・観光としての施設」
「ゆったり泊まりたい宿」
「地元のキーマンの絶え間ない活動」
地域紹介するホームページを変えただけで、イベントを運用しただけで人なんて来てくれません。
人が来てくれるために、リピートしてきてくれるためにどうしたらいいか?
丁寧に丁寧に、人がまた来たくなる空気を作らなければ訪れたい場所にはなりません。
菰野町は、精力的な、民間・行政のキーマンがいらっしゃるため、とても素敵な「訪れたい場所」に進化していました。
100%源泉かけ流しの天然温泉「片岡温泉」アクアグニス。
その中に入っているレストランも辻口博啓パティシエの人気店だったり、東京でも全然予約が取れないミネラルミスト浴、Le Furoがあったり。
エステはMiMCが入っていました。サンプルを試し、今度からメイク道具はMiMCで揃えようか、という気持ちに。
私は以前から、ショッピングはネットショッピングか旅先で…というのがトレンドになると考えていました。誰もがものが溢れる世界に、その情報の波に疲れています。
旅行に行って、リゾートハイ=旅による高揚感の中でお買い物をする。思い出がセットになったモノは特別なものになります。そういった「特別な感情」が働かなければ、私たちはますます買い物をしたいという気が起こらなくなってきます。
工場併設のファクトリーショップで職人の方から直接それらについての熱い思いがあれば思わず手に取るでしょう。じっくり話を聞く。とっておきの時間を過ごす。そして、財布の紐が緩むのです。
今ここでしか味わえない体験を買うのです。
接客をしている方なら当然ご存知ですが、店舗への滞在時間、商品への接触時間が増えれば増えるほど、購入率は格段に上がります。
小さな店舗の運営マニュアルはこちらに書いています↓
1人で回せる!繁盛店レシピ 接客編
1人で回せる!繁盛店レシピ 店作り編
菰野町には、泊まりたい宿があり、お金を落としたくなる店があり、萬古焼という産業と確かなる歴史、それを支える熱い人々がいます。
改めて工芸産地につきものの後継者問題についてもうかがうことができました。
分業となる産地では、生地やさんや、釉薬屋さん、窯元など様々な方との共存で成り立っています。自分の会社の跡を継がせたとしても、周囲に同じような世代で跡継ぎがいなければ成り立たない。売り先がない。買い手もいないのですから。そんな中でも「じゃぁ終わりにしよう」なんて、簡単に言えない。変えがたい、歴史と文化、残したいモノがあるのだから。
ずっと聞いていたことではありますが、経営者になって聞く話はまた別次元で響きました。運命共同体としての難しさと仲間の絆。
街は生き物。何を守って、何を変えていくべきなのか。
様々な視点から、じっくりを考察したい年末になりそうです。
古長谷莉花