北海道北斗市 未来像を描き、新たな公共交通を走らせる
北海道北斗市での公共交通運行の取り組み
北海道北斗市。函館市の隣に位置し、函館のベッドタウンにもなっている。海を臨めば、市内にある太平洋セメントの海上ベルトコンベヤーが伸びている。函館湾に面して工場が多数立地し、北斗市経済を支えている。
一方、内陸部は農業が盛んで、市が保有するきじひき高原のキャンプ場からは、北斗市・函館市が眼下に見渡せる。かわいらしいバンガローは、公共施設価格というお手軽さもあって、夏場は人気の場所であり、道民癒しの場所になっている。
このように函館圏の経済を下支えする北斗市で、私たちは、公共交通の未来像を描き、具体的な課題解決となる新たな公共交通を走らせることをした。
まず、市内の公共交通は、ローカルの雰囲気が漂う道南いさりび鉄道、JR、バスが担っている。都市部以外のどこの町もそうだが、通勤は基本的に車が多い。公共交通を使用するのは、学生、免許を持たない高齢者、観光客がほとんどとなる。函館市の中心部への通勤となれば、バス利用が一定程度あるが、市外・郊外に行けば行くほどその需要は低くなる。
そんな中で、多くの自治体は毎日決まった時間・決まった路線のコミュニティバスを走らせている。普通の人から見れば、路線バスと一見何も変わらないが、自治体が多くの補助を出して運行している。赤字になってしまった路線バスの赤字補てんをしながら、運行しているということも多い。
一般的に公共交通というと、大きな需要に対応するものとして鉄道、そして、バス、タクシーと続く。バスの次はタクシーになってしまうので、自治体の中では、公共サービスとしてタクシー券を配布するなど、高品質すぎるサービスを実施してしまうところもある。よって、バスとタクシーの間に位置する低需要呼応型の公共交通をつくればよいのである。
そこで、北斗市では、巡回ワゴンバスを実証運行することとした。これは毎日同じ路線ではなく、曜日ごとに運行する地区を変える。利用目的は、通院と買物に絞った。病院・スーパーの営業時間や滞在時間を意識してダイヤを組んで、約10人乗りのワゴンを地元タクシー会社に委託して運行している。当然、バスの委託運行より安い。
現在、実証運行中で、利用頻度の高い地区と低い地区が明確に出てきた。この巡回ワゴンバスは比較的、乗降場所やルート変更の対応ができるので、現在はその修正に向け準備している。
巡回ワゴンバスは、すべての地域にあてはまる交通とは言い切れない。公共交通はオーダーメイドのものであるから、住民に入り込んで徹底的に日常生活の移動についてヒアリングを行い、相応しい交通、ルート・ダイヤを組む。私たちは、手間さえ惜しまなければ課題は解決できることを信じている。